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リョナラー連合主催バトルロワイアル(パロロワ) 007.人の心と魔の体

「……ありえない……!こんな……こんなこと……!」

B-2の湖の傍で、豪奢な赤のドレスに金髪の縦ロールの
少女がわなわなと身体を震わせていた。

少女の名はナターシャ。
彼女は貴族であり、それも昔からの由緒正しい家柄を誇る、
国でも有数の大貴族だった。

「……腕の立つ護衛たちを揃えて……!
 名の知れた冒険者まで雇ったというのに……!
 それなのに、こんな、簡単に……!」

ナターシャはぶつぶつと呟きながら、頭を抱えていた。

彼女の顔に浮かぶのは、深い絶望。
もうどうにもならないと、理解してしまった恐怖。

「……死にたくない……」

掠れた声で、ナターシャが呟く。

「……死にたくない……死にたくない……!
 殺さなきゃ……皆、殺さなきゃ……!
 そうじゃないと……私が……!」

恐怖に思考を支配されたナターシャは、
自分の袋からオリハルコン製の短剣を取り出し、
ふらふらと歩き始めた。




湖の辺の岩に、少女が腰掛けていた。

その少女の名は、レミル。
あまり手入れのされてない金髪を肩に少しかかる程度まで伸ばし、
粗末な茶色の服を着た、まだ12、13といったくらいの幼い少女だ。

「……よし……とりあえず、これで大丈夫のはず……」

安心したように呟くレミルの額には、布が巻かれていた。
それは、先ほどレミルが自分の服の裾を破いたものだった。

レミルは確かめるように額の布を何度か撫でた後、
隣に置かれている袋へと視線を向ける。

「それじゃ、次は支給品の確認を……」
「……殺さないと……」
「っ!?」

レミルは、背後から聞こえてきた声にぎょっとして振り向く。
そこにいたのは、恐怖と絶望で顔を青ざめさせた少女、ナターシャの姿。

「……あ……あの……?」
「……貴女、死になさい……」
「……は……?え……?」
「……死になさいっ!!私のためにっ!!
 私が生き残るために、私に殺されなさいっ!!」

ナターシャは絶叫して、レミルにオリハルコンの短剣を突き出した。

「ひっ!?」

いきなりの凶行に驚いて、レミルは岩から転がり落ちてしまった。
しかし、そのおかげでナターシャの短剣は狙いを外して空を切った。

だが、レミルの危機はまだ去っていない。
体勢を崩したレミルに、ナターシャが再び短剣で襲いかかる。
今度は、どう考えても避けられそうになかった。

それを理解したレミルは、考える前に額に巻かれた布を外した。
布の下から現れたのは、額を縦に割る、第三の目。

「……っ!?」

ナターシャが驚いて、目を見開く。
レミルの額の目と、ナターシャの視線が交じりあった瞬間、
ナターシャの身体に凄まじい激痛が走った。

「いづっ……!?ああああぁぁぁあああぁぁぁっっ!!?」

ナターシャは今まで味わったことのない痛みに絶叫して、
短剣を手から取り落として、倒れ付す。

「……!」

レミルはナターシャが倒れたことを確認すると、
ナターシャが落とした短剣と自分の袋を拾い上げて、
脱兎のごとく逃げ去っていった。

「……う……く……うぅ……!」

ナターシャは、それをただ睨みつけることしかできなかった。
身体に激しい痛みが走ったのと同時に、全身が痺れたように
自由が効かなくなっていたのだ。

「あの、化物……!覚えて、なさい……!
 必ず……必ず、殺して……やる……!」
「……ミツケタ」
「……え?」

レミルに向かって呪詛を吐いていたナターシャは、
すぐ傍から聞こえてきた声に、顔を向ける。

そこには、水の身体を持つ女性の姿があった。

人間ではありえない身体を持った女性。
彼女は、水の精霊ウンディーネだ。

「マズハ、一人ネ」

その言葉を聞いたナターシャは恐怖する。
このウンディーネは、自分を殺す気だ。

「い……いやっ……!?やめてっ……!助けて……!」
「ダイジョウブ、イタクナイヨ。
 スグニ終ワルカラ、怖ガラナイデ」

必死に助けを乞うナターシャに対して、
ウンディーネは微笑みながら近づいてくる。
その微笑みが、逆にナターシャの恐怖を煽る。

「ひ……ひぃ……!?」

ゆっくりと近づいてくる、ウンディーネ。

「……いや……来ないで……!」

ウンディーネは、止まらない。

「……いや……いやっ……!」

鼻先が触れるほどに、ウンディーネはナターシャに近づく。
そして、ナターシャの頬を冷たい両手で優しく包んだ。

「……いやああぁぁぁあああぁぁぁぁっっ!!?」

湖に、ナターシャの絶叫が響き渡った。




ナターシャから逃げ出したレミルは、森の中を走っていた。

「はぁっ……はぁっ……!な……何なの、いきなり……!?
 まだ目を見られたわけでもなかったのに……!?」

訳も分からず殺されかけたレミルは、恐怖で混乱していた。

額に目を持つレミルは、当然ながら人間ではない。
レミルは人間と魔物の間に産まれた子供で、俗にいう忌み子である。

だが、額の目さえ隠してしまえば、レミルは普通の少女だ。
彼女は人間として、貧しいながらも街で暮らしていた。

そうして、額の目を隠して細々と生きてきた忌み子の少女は、
運悪く今回の殺し合いに巻き込まれてしまったのだ。

「……死にたくない……か……」

危機から逃れ、時間が経ったことで落ち着いたレミルは、
先ほどのナターシャの言葉を思い出していた。

冷静になってみると、襲われた理由が理解できた。
あの少女は、レミルが忌み子だから、気味が悪いからと、
そんな理由で襲ったわけではない。

ただ、単純に死にたくなかったのだ。
だから、殺し合いで他の参加者を殺して、
自分が生き残ろうと思ったのだろう。

しかし、レミルには納得できなかった。

「そりゃ、私だって死にたくないよ……。
 でも、だからって、あの人は誰かを殺してまで
 生き残りたいっていうの……?」

人を殺してでも、生き残りたい。
レミルには、その考えが理解できなかった。

レミルは、殺し合いに乗るつもりはない。
額の目のせいでいろいろと辛い目にはあってきたが、
何だかんだで、レミルは人間のことが嫌いではなかったのだ。

働き先の酒場の店主は良い人で、食べる物が無いときは
よく賄いを出してくれた。

スラムの子供たちはみんな悪戯っ子で手を焼いたが、
よく懐いてくれて、一緒に遊ぶのは楽しかった。

教会のシスターは、字の読めないレミルに
無償で字を教えてくれた。
そして、レミルが辛い時にはいつも励ましてくれた。

もちろん、嫌な人間や嫌いな人間はいた。
しかし、「殺してやりたい」「死んでしまえ」と
思うようなことはなかった。

「……私は……絶対に殺し合いなんて、しない……」

もし殺し合いなんて愚かな行いに手を染めてしまったら、
レミルの夢見た未来は、永遠に訪れなくなってしまう。

ひたすらに真面目に、誠実に働き続けて。
周りの人間から少しずつ信頼を得ていって。

そうしていれば、いつの日か必ず。
額の目を隠さずに生きられる未来が来るはず。

レミルは、そう信じているのだから。

「…………」

額の布を強く結び直して、レミルは歩き始めた。
殺し合いを打破するための、仲間を探すために。




「……じゃあ、仲間を増やしながら、
 脱出を目指すのですね、ユンフェお母様」
「ソウダヨ、貴女ミタイニネ」

ナターシャにユンフェと呼ばれたウンディーネは、
ナターシャの言葉に優しい声で答える。

そのナターシャの姿は、既に人間のものではなかった。
顔立ちなどは元のままだが、その身体は水になっていた。

ナターシャは、ユンフェにウンディーネにされたのだ。

ウンディーネは気に入った人間を自分と同じ身体にして、
同族を増やすことが多々あるため、恐れられている精霊だ。

このユンフェも例に漏れず……いや、気に入る、気に入らないに
関わらず、出会った参加者は全て同族にしてしまうつもりだった。

(仲間ガ増エレ増エルホド、脱出シヤスクナルカラネ)

自分の子供となったナターシャの頭を撫でながら、
ユンフェはウンディーネという種がこの殺し合いに
生き残るための策を、目まぐるしく考え続けていた。

(……最悪デモ、誰カ一人ハ仲間ヲ生キ残ラセナイト)

場合によっては、自らの生命を犠牲にすることさえも
ユンフェは覚悟していた。

大事なのは、個ではなく種。
それが、ユンフェというウンディーネの考え方だった。


【B-2/湖/1日目 0:30~】

【レミル@忌み子】
[年齢]:13
[状態]:健康、左腕の服の裾が破かれている
[武器]:オリハルコンの短剣
[防具]:額に巻かれた布
[所持品]
・レミルの袋
 ・基本支給品一式
 ・(不明の武器・防具・道具)
[思考・状況]
1.殺し合いから脱出する
2.強力してくれる参加者を見つける
3.額の目はできる限り隠す


【ナターシャ@水の精霊ウンディーネ(元貴族)】
[年齢]:0(元17)
[状態]:健康
[武器]:なし
[防具]:なし
[所持品]
・ナターシャの袋
 ・基本支給品一式
 ・(不明の防具・道具)
[思考・状況]
1.ユンフェに従う

※人間の時の記憶はほとんど失っています。


【ユンフェ@水の精霊ウンディーネ】
[年齢]:不明
[状態]:健康
[武器]:なし
[防具]:なし
[所持品]
・ユンフェの袋
 ・基本支給品一式
 ・(不明の武器・防具・道具)
[思考・状況]
1.他の参加者をウンディーネにする
2.ウンディーネを生き残らせる


『参加者・ジョーカーの現在地』
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