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リョナラー連合主催バトルロワイアル(パロロワ) 001.喪失感と期待外れの絶望

深夜の暗い森の中、すすり泣く少女の声が響いていた。

「……なんで……!なんで、こんなことに……!」

その少女の名はエリス。
少しくすんだくせっ毛の茶髪を肩まで伸ばし、
白と茶を基調としたエプロンドレスを着た少女だ。

殺し合いという理不尽な状況に巻き込まれた無力な少女は
声を震わせて泣いていた。

しかし、エリスが泣いているのは殺し合いに巻き込まれた
恐怖だけが理由ではなかった。

「……なんでっ……アリスが、殺されなきゃいけないの……!」

今エリスが感じているものは、恐怖よりもむしろ悲しみのほうが強かった。
なぜなら、殺し合いの開始前に首輪を爆破されて殺された少女は
エリスの双子の妹であるアリスだったからだ。

妹が死んでしまったなど、エリスには受け入れられなかった。

エリスとアリスはいつも一緒だった。
昨日も一緒に家の手伝いをして、一緒に夕飯を食べていた。
アリスはいつものように料理を焦がして、母に怒られていた。
しょんぼりするアリスを、いつものようにエリスが慰めていた。

ついこの前、アリスは好きな人ができたと喜んでいた。
近いうちに告白するつもりだと、アリスは言っていた。
「その前に料理をまともに作れるようになりなさい」とからかったら、
アリスは真っ赤になって怒って、そのまま追いかけっこになった。

単純でドジで、良くも悪くも素直な妹だった。


そんなアリスが、死んだ。

首輪を爆破されて。

首を吹き飛ばされて。

呆気なく。容赦無く。

一瞬で。


「……ーーーーーっ!!」

エリスは悲しみに耐え切れず、慟哭する。
その悲痛な声は森に響き渡り、森全体が悲しみに
沈んでいるような印象を与えた。




「うおー!ちくしょー!なんなの、これ!?
 どういうことなの、これ!?なんなの、殺し合いって!?
 ふざけんな、コンチクショー!?」

森の中をでたらめな軌道で飛び回りながらギャースカ喚く者がいた。

その姿はとても小柄で、明らかに人間では無い小ささだった。
いや、そもそも普通の人間は宙に浮いて飛び回ることなどできない。

そう、それは人間ではなかった。

「ていうか、よくアタシサイズの首輪なんて用意できたな!?
 特注なの!?特別扱いなの!?ありがとうございますねぇ!
 嬉しくって涙が出るわ!ほんと、涙出る!泣けてくる!」

間を置かずに、のべつ幕なしにしゃべり続けるその小人は、
適当に伸ばした青い髪に緑の三角帽子に緑のだぼっとした
ワンピースを着た少女の姿をしていた。

風の精霊シルフ。
森や山などでよく見かける割とポピュラーな精霊である。
シルフは温厚で人間に対して害意を抱くものは少ないが、
よく人間の持ち物を盗んだり、魔法で混乱させたりする悪戯者だ。

このシルフの名はルーシー。
至って普通の、どこにでもいるシルフである。
強いて特徴をあげるとするなら、不運だということだろうか。

彼女はたまたま捕まって、殺し合いに放り込まれたのだ。

「うわーん!死にたくなーい!シニタクナーイ!
 大して強くもないシルフのアタシがこんな殺し合いに
 勝ち抜けるわけないだろ、バカヤロー!」

ルーシーは泣きながら飛び回り続けるが、
前をよく見ていなかったために木の幹に顔面からぶつかり、
ぎゃんっ!と悲鳴を上げて地面に落ちる。

「うぐぐ……!ちくしょー……!
 あのオッサン、絶対に許さん……!
 死んだら呪い殺してやるかんな……!」

顔を抑えてうずくまりながら、怨嗟の声を上げるルーシー。
しかし、地面に落ちた拍子に肩からずり落ちた袋を見て、
ぱっと顔が明るくなる。

「……そうだっ!支給品っ!なんか強い武器とかあれば、
 アタシでも殺し合いに勝ち残れるかもっ!」

喜び勇んで、ごそごそと袋の中を漁る。
そして、出てきたのは……。

「……こ……これはっ!?」

なんと、出てきたのは3mはあろうかという大斧。
付属していた説明書を読むと、この大斧は巨神の大斧というらしい。
凶暴な巨人モンスターであるジャイアントの中でもひと握りの強者にのみ
与えられるという、凄まじく強力な武器だという。

「……って、シルフのアタシにこんなもん扱えるかあぁぁぁっっ!!」

激昂して、かなぐり捨てるように大斧を袋に投げ戻すルーシー。

巨神の大斧どころか、そもそも普通の斧すら扱えない彼女には、
この支給品は馬鹿にしてるとしか思えないものだった。

「……つ……次っ!!防具っ!!武器がダメでも、防具がまともならっ!!」

ルーシーは気を取り直して、再び袋を漁る。
混乱の魔法「コンフュージョン」を使えるシルフのルーシーなら、
強力な防具で相手の攻撃を無効化しているうちに相手を混乱させて、
支給品を奪って逃げるなどすれば、ワンチャンあるはずである。

そして、出てきたのは……。

覇王の鎧。

今は昔、聖王と呼ばれる者と覇王と呼ばれる者の戦いがあった。
戦いは熾烈を極め、幾日にも及ぶ戦いの後、相打ちによって
両者とも力尽きたと云われている。

そのとき、覇王が身に纏っていたものがこの覇王の鎧である。

まさに覇王と呼ばれるものに相応しい雄々しさを持つ鎧であり、
その頑強さはまさに伝説級、戦士であれば垂涎の代物だ。


そして、当然ながらシルフのルーシーには装備できない。

「フンガーーーーっっ!!」

再び激昂し、鎧を蹴り飛ばして袋に戻すルーシー。

「なんなのっ!?なんで、こんなんばっかりなのっ!?
 イジメなのっ!?いたいけなシルフをイジメて楽しいのっ!?」

泣きながらギャーギャー文句を言うルーシー。
しかし、いつまでも泣いて文句を言ってても仕方が無い。

「……道具っ!!」

最後の望みにかける。
何か起死回生の一手を打てる道具が支給されていれば、何とかなるはずだ。

だが、しかし……。

「……は……?」

ルーシーは呆けた声を上げる。
なぜなら、袋から出てきた最後の支給品は……。

「……混乱の……魔石……?」

そう、混乱の魔石である。
混乱の魔法「コンフュージョン」の効果を持つ、使い捨ての魔道具。

ルーシーが自力で使える魔法「コンフュージョン」と同じ効果を持つ、
ただそれだけの支給品である。

「……ふ……ふっふっふ……」

ルーシーは低い声で笑い始める。

「……ふっざけんな、あのクソ親父がああぁぁぁぁっっ!!
 どこまで、シルフを馬鹿にすれば気が済むんじゃああぁぁぁぁっっ!!」

そして、叫んだ。
文字通りにブチ切れた。
いわゆる、激おこぷんぷん丸である。

「はーっ……はーっ……!」

大声を出したせいで息を切らしていたルーシーだが、
しばらくするとがっくりと肩を落とした。

「……終わった……アタシ、死んだ……」

その目には、涙が滲んでいた。
もはや、ルーシーがこの殺し合いで生き残る術は無くなったのだ。

「……ん?」

しかし、ふとルーシーの耳がかすかな声を捉えた。
その声は深い悲しみに満ちていると、ルーシーには分かった。

「……誰か、泣いてる?」

どうやら、近くに参加者がいるようだ。
それも、何か泣きたくなることがあったらしい。

いや、こんな殺し合いに巻き込まれてる時点で
既にいくら泣いても泣き足りないくらいに悲惨ではあるのだが。

「……ちょっくら行ってみますか」

特に考えもせず、興味本位で見に行くことに決めたルーシー。
先程まで「死んだ!アタシ、死んだ!」と絶望していたのが
嘘のように、軽い動きでひらひらと飛んでいく。

シルフはいつまでも昔のことに拘らない。
常に未来を見据える、前向きな性格なのだ。


【E-1/森/1日目 0:30~】

【エリス@家事手伝い】
[年齢]:15
[状態]:健康、悲しみ
[武器]:なし
[防具]:なし
[所持品]
・エリスの袋
 ・基本支給品一式
 ・(不明の武器・防具・道具)
[思考・状況]
1.アリス(双子の妹)の死に絶望


【ルーシー@風の精霊シルフ】
[年齢]:不明
[状態]:健康
[武器]:なし
[防具]:なし
[所持品]
・ルーシーの袋
 ・基本支給品一式
 ・巨神の大斧
 ・覇王の鎧
 ・混乱の魔石
[思考・状況]
1.声(エリス)の元に向かう
2.支給品の件は絶対に許さない


『参加者・ジョーカーの現在地』
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