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リョナラー連合主催バトルロワイアル(パロロワ) 009.失意と決意

E-4の森の中に、一人の女性の姿があった。

彼女の名はイリカ。
真っ直ぐに伸ばした長く美しい金髪に、緑の武道着を纏った女性だ。

イリカは、若干の苛立ちを含ませた声でぼやいていた。

「おいおいおいおい、面倒なことに
 巻き込んでくれちゃったね、あのおっさん。
 こりゃ、雷拳連打で消し炭決定だね、コノヤロー」

殺し合いに巻き込んだ男に対して殺意を露わにしつつも、
とりあえず、イリカは支給品確認のために袋を漁ることにした。

「杖に胸当てか。いらん。
 道具は……なんだ、ナヤマの霊薬かよ。
 まぁ、解毒とかには使えるかねぇ」

支給品の内容に失望しながら、イリカは参加者名簿を確認し始める。
そして、イリカは自分の弟子であるファルの名前を見つけた。

「なんだ、弟子もいるのか。
 アイツ程度の未熟者じゃ、早々にくたばりそうだな」

イリカはへっ、と馬鹿にするように鼻を鳴らす。
次に地図を取り出して確認するが、森が多すぎて
現在地がどこなのか分からなかった。

「とりあえず、適当に歩き回って目印になる建物を探すか」

そうして、イリカはぶらぶらと歩き始めるのだった。




短めの赤い髪に赤い拳法着の少女……ティアは茫然としていた。
その理由は、ティアが先ほど目を通した参加者名簿にあった。

「……なんで……ジョーカーの欄に、師匠の名前が……?」

そう、参加者名簿のジョーカーの名前一覧に、
ティアの師匠であるダレスの名があったのだ。

「……嘘だ……!きっと、こんなのデタラメだ……!
 そ……そうだ、同名の別人ってこともあるし……!」

そう自分に言い聞かせるティアだったが、名簿の中に
ダレスのライバル、イリカの名前を見つけてしまう。

(……師匠は、ずっとアイツと決着を付けたがっていた……!
 それも、試合ではなく『死合』で……殺し合いで……!)

しかし、それをイリカのほうが嫌がって逃げ回っていたのだ。
ダレスはイリカに逃げられる度に失望の溜息を漏らしていたし、
ティアも格闘家としてあるまじき姿だと軽蔑していた。

つまり、痺れを切らしたダレスが無理やりイリカを
殺し合いに巻き込んだのでは、とティアは推測した。

(……でも、だからって、無理やりこんな殺し合いをっ……!)

ありえない。
ライバルとの決着を着けるために、殺し合いを開くなんて。

(そ……そうだ……!いくら師匠が格闘馬鹿の社会不適合者でも、
 そんな理由で殺し合いを開くはずが……!)

いや、しかし……もしライバルとの決着をエサに、
殺し合いをしたい者が協力を申し込んできたとしたら?

(……条件次第では……あり得なくない、かも……)

ティアの師匠のダレスは、強くなることが生きる最大の目的で、
強さを得るためには人命を軽く見るようなところが多々あった。
『強くなければ生き残れない』『弱ければ死ぬだけだ』が口癖なくらいだ。

ティアにしたって、何度も命がけの修業に付き合わされている。
(逆に言えば、それを潜り抜けてきたから弟子として認められたのだが)

ライバルのイリカと決着を着け、さらなる強さを得るためなら、
40名程度の見知らぬ者の命など、取るに足らないと考えても、
おかしくはない。

(……いや、そもそも……師匠にとって、
 この殺し合いは悪事でも何でもないのかも……!
 『強い者が生き残り、弱い者が死ぬ』……!
 この殺し合いは、師匠の人生哲学そのものだ……!)

そこまで考えて、ティアは理解せざるを得なかった。

『師匠なら、この殺し合いに関わっていても何の不思議もない』と。

がくり、と膝から力が抜けて、ティアは地面に手を突く。
その瞳からはぽろぽろと涙が零れていた。

自分の師匠が、非道な殺し合いに加担していた。
そのことがティアには堪らなく悔しくて、情けなかった。

しかし、すぐにダレスに対して怒りがこみ上げてきた。

「……こんなことっ……許せないっ……!
 師匠が、もし本当にこの殺し合いに関係してるならっ……!」

殴り飛ばしてでも、止めてやる。
最後の言葉はあえて口に出さず、心の中に強く刻み付ける。

……そして、次の瞬間、ティアは宙を舞っていた。

「うひゃあああぁぁぁぁっ!!?」

いきなり上空へ引っ張り上げられたティアは悲鳴を上げる。
見ると、足に緑色の触手が巻き付いており、その先には
棘の代わりに触手を生やした細いサボテンのような
一つ目のモンスターがうにょうにょと身体をくねらせていた。

身体中から触手を生やしたそのモンスターの名は、ローパー。
ジョーカーの欄にその名前が載っていたのを、ティアは思い出す。

(……し……しまったっ……!師匠のことで、
 周囲への警戒が疎かになっていたっ……!)

当の師匠がこの失態を見ていたなら、
拳の一つはお見舞いされているだろう。

そう思ったティアは、すぐにその思考に複雑な思いを抱いてしまう。

(……いや、今はそんなことを考えている場合じゃないっ!)

ティアは雑念を振り払い、足に巻き付いた触手を反対の足で
蹴り飛ばそうとするが、ローパーはその前に触手を思いっきり
振り下ろして、ティアを地面に叩き付けた。

鈍い音とともに、強烈な衝撃がティアを襲い、呼吸が一瞬止まる。

「がっ……、はっ……!」

しかし、それだけでは終わらない。

ローパーは再び触手を振り上げてティアを宙へ放り上げ、
そのまま振り下ろして、ティアを地面に叩き付ける。

二度目の衝撃に、ティアの身体が悲鳴を上げる。

「が、ふっ……う、あ……!」

衝撃で息ができず、口をぱくぱくさせて、ティアは苦しんでいる。

そんなティアに、ロ-パーは何本もの触手を巻き付かせて、
思い切り締め上げ始めた。

「……ぅ……ぁぅ……ぅ……!」

みしみし、と身体中の骨が軋み、ティアは苦しそうに呻き声を上げるが、
その口にローパーの太い触手が入り込み、喉奥まで侵入する。

「……ん……んぅぅっ……!」

触手を吐き出そうと抵抗するティアを、ローパーは強く締め上げて黙らせる。
ティアが大人しくなったことを確認したローパーは触手をティアの喉奥で
暴れ回らせて、ティアを苦しめる。

(……ん、ぐぅっ……!?……く……苦、し……い…………!)

呼吸ができないくらいに喉をめちゃくちゃに蹂躙され、
骨が折れそうなほどに身体を強く締め上げられるティア。

あまりの苦しさにティアの抵抗する意思は弱まり、
痛みと酸欠で意識がどんどん遠のいていく。

(……そんな……こんなところで……終わるの……?
 師匠を……止められ、ず……こんな……簡単、に……)

自分に死が迫るのを感じ、絶望するティア。
しかし、ティアの意識が闇に沈む、その一瞬前……

ずどんっっ!!という音とともに、ティアの身体中に電撃が走った。

「ぎゃああぁぁぁああぁぁぁっっ!!?」

沈みかけた意識を電撃で無理やり叩き起こされて、
ティアは慎みをかなぐり捨てた声で絶叫する。

「うるせえ」

耳元で聞こえた鬱陶しそうな声とともに、
ティアの脳天に何者かの拳が叩き込まれる。

「づっ……!?おおおぉぉぉっ……!!」

あまりの痛みに蹲って悶絶するティアだが、
そこで触手による拘束が解かれていることに気が付いた。

「おい、いつまで馬鹿みたいに座り込んでんだ。
 うちの弟子なら、もう回復して私に文句の一つくらい
 吐いて、また殴られてるところだぞ」

そのひたすらに横柄な、しかし聞き覚えのある声に、
はっとしたティアは顔を上げる。

そこにいたのは、師匠ダレスのライバル、イリカだった。




ローパーはイリカの攻撃で黒こげになりながらも、
ティアを解放してすたこらと逃げ去っていった。

「おー、手加減したとはいえ、私の雷拳を受けて、
 逃げる力が残っているとはねぇ。
 あの触手君、品種改良でもされてるのかね」

感心したように、イリカはローパーの逃げて行った方を眺めている。
しかし、それに飽きたのか、未だに座り込んでいるティアに向き直った。

「……で、お嬢ちゃんはたしか……『炎帝』の弟子だったか?」
「…………」

その言葉に、無言で頷くティア。

ダレスは『炎帝』と謳われるほどの凄腕の格闘家だ。
対して、イリカは『雷神』と呼ばれている格闘家で、
どちらの呼び名も、由来はその必殺拳にあった。

炎の必殺拳『炎拳』と雷の必殺拳『雷拳』。
格闘家としてはいささか特殊な必殺拳を持つ二人は、
その界隈では、かなりの有名人だった。

ローパーの攻撃とイリカの雷拳のとばっちりによるダメージから
何とか回復したティアは、立ち上がってイリカへと顔を向けた。

「……一応、助けられた礼は言っておくわ、雷神」

できれば、もうちょっと普通に助けてほしかったが、
元々は油断して不意打ちを喰らった自分が悪いので、
ティアは不満を飲み込んで、素直(?)に礼を言った。

「おう、礼は支給品でいいぞ。
 一つだけで許してやる」
「…………」

助けられた手前、断るわけにもいかず、
ティアは仕方無く袋を漁って、一番必要のなさそうな
支給品をイリカのほうに放る。

イリカは受け取った支給品……鞘に納められた剣を見て、憮然とする。

「おいおい、剣なんかいらねぇって。他のを寄越せよ」
「一つ、としか言われなかったからね」

しれっと答えるティアに、ぶーぶーと文句を言いながらも、
イリカは袋に剣をしまった。

「しかし……お嬢ちゃんがここにいるってことは、
 もしかして、炎帝のヤツもここにいるのかね?」

イリカは心底嫌そうな顔で、ティアに確認する。
それに対して、ティアは疑問を口にする。

「……ちょっと待ってよ、雷神。
 アンタ、名簿を確認してないの?」
「したよ。弟子がいた」
「いや、師匠もいたでしょ。あと私も」

弟子しか確認していないイリカに、思わずティアは突っ込む。

「いや……ていうか、アンタらの名前、知らないし」
「…………」

イリカの言葉に、ティアは思わず絶句する。
しかし、そういえば、たしかにダレスもティアも
一度も名前を名乗ったことがなかった気がする。

呼び合うときも、炎帝、雷神、だったはずだし、
弟子たちに至っては、会話すらしていない。

そもそも、ティアがイリカの名前を知っていたのも、
イリカの弟子であるファルが『イリカ師匠』と呼んでいたのを、
たまたま覚えていただけなのだから。

「……じゃあ、今さらだけど、名乗らせてもらうわ。
 私はティア。炎帝ダレスの弟子よ」
「おぅ、ご丁寧にどうも。
 雷神とか呼ばれてるイリカさんですよ」
「……どうも」

今まで名乗り合ってないというのも、格闘家としてどうなのか、
と思わないでもなかったが、ティアは深く考えないことにした。

それよりも、イリカに告げておくことがあると、ティアは思い出す。

「……雷神。師匠だけど……ジョーカーの欄に名前があったわ」
「……は?マジで?」

ティアの言葉に、さすがのイリカも驚いて聞き返す。

「ええ……だから、師匠はこの殺し合いに
 加担しているのかもしれない……」
「おいおい、マジかよ……ただでさえメンドくさいヤツが、
 余計にメンドくさい状態になってんのかよ……。
 ……っていうか、ティアちゃんは何も知らないのか?」
「……ええ、私は何も伝えられてないわ」

答えると同時に、胸が痛んだ。

『師匠は何も告げずに、自分を殺し合いに巻き込んだ』

ティアにはそのことが堪らなく悲しくて、寂しかった。

「……で、ティアちゃんはどうするんだ?
 師匠と同じように、殺し合いに乗ったりするのか?」
「……そんなわけないでしょうっ!師匠を探して止めるのよっ!
 こんなこと、間違ってるっ!絶対に許せないわっ!」
「おや、アイツの弟子の割には正義感に溢れたセリフを吐くね」

茶化すようなイリカの言葉に、ティアはきっとイリカを睨む。

「……アンタこそ、どうするのよ?
 今回こそは、師匠から逃げられないわよ。
 それとも、他の参加者が師匠を倒してくれるのを
 隠れて待つつもりだったりするわけ?」

もしそうなら、ティアは格闘家としてイリカを心底軽蔑するだろう。

「さて、どうするかね。
 まぁ、出会ってから考えるよ」

イリカは適当な答えで、お茶を濁した。
それがティアの癇に触る。

「……何よ、その答え?
 認めたくないけど、師匠に対抗できるのはアンタくらいなのよ?
 アンタだって私を助けたくらいだから、殺し合いには乗ってないんでしょ?
 だったら、もう少し真面目に……」
「なんだ、ティアちゃん?私に炎帝を殺してほしいのか?」
「……っ!」

遮るように挟まれたイリカの言葉に、ティアは身体を強張らせる。

「違っ……!私はっ……!」
「それとも、私が炎帝も殺し合いも全部何とかしてくれるとか、
 期待してるんじゃないだろうな?」
「……それ……は……」

イリカの言葉に、ティアの声から力が無くなっていく。

言われてみて、イリカの言う通りだと、ティアは自覚した。
ティアは何だかんだで、師匠のダレスと同格の格闘家である
イリカに期待していたのだ。

「…………」
「図星か?なら言わせてもらうぞ。
 『甘ったれんな、クソガキ』」
「……っ!」

イリカの言葉に、ティアの身体が震える。

甘ったれている。
その通りだった。

最初は自分の力で師匠と相対すると決めたはずなのに。
それなのに、イリカに助けられたことで、甘えが生じた。

『こいつなら、何とかしてくれるのではないか』と、期待してしまったのだ。

(……情けない……!それでも、私は炎帝の弟子か……!?)

ティアは自分の不甲斐なさに、怒りすら感じていた。

「……そうね。確かに私は甘えていたみたい。
 師匠と戦うって、決めたはずなのに……でも……」

ティアはぐっと歯を食いしばり、イリカに顔を向ける。

「でも、もう甘さは捨てるわ!
 私は、私の力で、師匠を止める!」

ティアは自らの決意をイリカにぶつけるように宣言した。

「……そうかい。まぁ、頑張れ」

ティアの決意を聞いたイリカはひらひらと手を振って、
そのまま立ち去っていった。

「…………」

後に残されたティアは、イリカが見えなくなった後に、
イリカとは別の方向へと力強く足を踏み出した。

道を外した師を止めるために。


【E-4/森/1日目 0:30~】

【イリカ@格闘家】
[年齢]:20
[状態]:健康
[武器]:なし
[防具]:なし
[所持品]
・イリカの袋
 ・基本支給品一式
 ・ナヤマの長剣
 ・霊樹の杖
 ・白銀の胸当て
 ・ナヤマの霊薬×2
[思考・状況]
1.目印になる建物を見つけて、現在地を把握する


【ティア@格闘家】
[年齢]:15
[状態]:ダメージ(中)
[武器]:なし
[防具]:なし
[所持品]
・ティアの袋
 ・基本支給品一式
 ・(不明の防具・道具)
[思考・状況]
1.師匠(ダレス)を止める


【ローパー@触手モンスター】
[年齢]:不明
[状態]:ダメージ(中)
[武器]:なし
[防具]:なし
[所持品]
・なし
[思考・状況]
1.参加者を襲う
2.金髪の女(イリカ)は強そうなので、避ける


『参加者・ジョーカーの現在地』
genzaichi_rowa009.png


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