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リョナラー連合主催バトルロワイアル(パロロワ) 012.炎と雷と竜

A-2の森の中に、切り株に腰を下ろした
二人の少女の姿があった。

一人は鮮やかな赤い髪を持ち、
茶色の毛皮の外套を纏った少女で、
もう一人は明るい緑色の髪を肩まで伸ばし、
緑の武道着を着た少女だった。

「じゃあ、そのイリカって人がファルの知り合いなんだね」

赤い髪の少女は袋から取り出した名簿を眺めながら、
武道着の少女……ファルに声をかける。

「はいっ!知り合いっていうか、師匠ですけどね!
 アルフィさんは、誰か知り合いはいましたか?」

ファルの言葉に赤い髪の少女……アルフィは名簿から
視線を外し、ファルへと顔を向ける。

「私の方は、ルルフェっていう相棒の魔術師と、
 仕事で護衛の対象だったナターシャさんの二人かな」
「なるほどっ!ルルフェさんとナターシャさんですねっ!
 忘れないようにメモしておきますっ!」

ファルはすぐさま袋からペンとインクを取り出し、
名簿に何やら書き込み始める。

「……それにしても、最初に出会ったのがファルで良かったよ。
 支給された武器がこんなんだったから、結構不安だったんだ」

そう言って、アルフィは笑いながら右手に持っていた杖を掲げた。

その杖は木製であり、そこそこ丈夫そうではあるものの、
武器として振り回すにはいささか頼りないものだった。

魔術師であるルルフェと共に過ごしてきたアルフィには、
この杖が魔術の顕現を補佐する魔術媒体だということが分かったが、
そんなものよりも、短剣の一本でも支給してくれたほうが
アルフィにとってはありがたかった。

「防具は一応鎧が支給されてたけど、皮製の安物だしね。
 ……そういえば、ファルの支給品は何だったの?」

見たところ、ファルは武器の類は持ってないように見える。
格闘家だと聞いていたから、武器は必要ないと判断して
袋にしまったままなのかもしれない。

(もしそうだったら、武器を譲ってもらえないかなぁ)

そんな風にちょっと期待していたアルフィだが、
アルフィの言葉を聞いたファルは一瞬固まった後、
顔を横に向けて、ぼそっと呟いた。

「……し、でした……」
「……え?」

何を言ったのか聞こえなくて、アルフィはファルに聞き返した。

「……だからっ!石でしたっ!ただのっ!」

ファルは袋に手を突っ込んで、取り出したものをアルフィへと突き出す。
その手には、たしかに石が握られていた。

「……は……?石……?いやいや、さすがにそんな……」
「ええ、信じられないでしょうねっ!
 私だって、目を疑いましたよっ!」

冗談だろうというアルフィの言葉に、
ファルは歯を剥き出しにして吠えた。

ということは、ファルには本当にただの石が支給されたらしい。
魔石ですらない、その辺にでも転がってそうな石が。

これは酷い。

「そりゃ、私は素手でも戦える格闘家ですから、
 基本的には武器はいらないですよっ!?
 でも、だからって、これはないでしょっ!?
 しかも、この石、めちゃくちゃ握り易いんですよっ!?
 握り込んで殴るのに、すっごく適した石なんですよっ!?
 私、それに気が付いて『あ、悪くないかも』って思っちゃったんですよっ!?
 ただの石を武器として支給されて、そんなこと思っちゃった私が
 次の瞬間に感じた言い表せないほどの口惜しさと惨めさが
 アルフィさんには分かりますかっ!?」
「いやあの、ちょっと落ち着こうか、ファル?
 そんなに大声出すと、他の参加者に聞こえちゃうからね?」

アルフィは突然のファルの豹変に面喰いながらも、
どうどうとファルを宥める。

おそらく、そうとうに腹に据えかねていたのだろう。
そりゃ、こんな殺し合いに巻き込まれて、
支給された武器が石ころだったりした日には、
キレてもおかしくはないかもしれない。

自分の杖はマシな部類だったんだなぁ、と
アルフィは痛感していた。




喚く少女とそれを宥める少女。
そして、木の陰からそれを注視する少女がいた。

木の陰に隠れた少女は、二刀の剣をそれぞれの手に携え、
白い服の上から胸当てを着けた、褐色肌の銀髪の少女だった。

「…………」

褐色の少女はふところから石……魔石を取り出し、
ためらうことなく、二人の少女に向かって放り投げた。




「……というわけで、師匠は本当に酷い人なんですっ!
 あの人、何かにつけて私を殴るんですよっ!?
 しかも、それに文句言ったらまた殴ってくるしっ!
 まったく、あの憎い社会不適合の人格破綻者めっ!
 いつか、目にもの見せてやりますよっ!
 下剋上ですよ、下剋上っ!」
「…………」

ファルの怒りの矛先はいつの間にか、師匠のイリカに向かっていた。
アルフィはそんなファルを困ったように見つめながら、考えていた。

(……最初は同情して愚痴を聞いてあげてたけど、
 そろそろ時間が勿体ないし、止めたほうがいいかな……)

しかし、アルフィがファルを止めようとした次の瞬間、
視界がいきなり赤一色に塗り潰された。

「っ!?」

何が起こったかはまったく分からなかったが、
それでもアルフィは防衛本能に従って横に跳んだ。

直後、肉を切る音とファルの悲鳴が聞こえてきた。

「……ファルっ!?」

アルフィが慌ててファルのいた方向へと視線を向けるのと、
視界の赤色が引いていくのは、ほぼ同時だった。

回復した視界は、しかし再び赤に染まる。
血塗れで倒れ伏す、ファルの変わり果てた姿によって。

「……っ!」

それを確認すると同時に、アルフィは再び横に跳ぶ。
一瞬遅れて、アルフィがいた場所に剣閃が走った。

振り返ったアルフィの目に、二刀を構えた褐色の少女が映る。
褐色の少女は剣を構え直し、少し感心した様子でアルフィを見やる。

「……上手く避けたわね。仲間がやられて
 動揺しているうちに仕留めるつもりだったのに」
「あ……貴女、殺し合いにっ……!」
「乗ったわ」

褐色の少女は短く答え、アルフィに襲い掛かる。
アルフィは慌てて杖を掲げて防御する。

杖は木製でありながらも、しっかりと刃を防いでくれた。
最悪、そのまますっぱりと真っ二つにされるかもと
考えていたアルフィは、予想外の杖の頑丈さに感謝する。

褐色の少女も木製の杖に攻撃を防がれたのが意外だったのか、
軽く眉を上げて驚いた様子を見せる。
しかし、それは一瞬で消え、すぐにもう一方の剣を
横薙ぎに振るってきた。

アルフィはそれを地面に転がって避け、
少女の顎に向かって杖を思いっきり突き出す。

だが、少女は首を僅かに反らして杖を避け、
地面に転がったアルフィを蹴り飛ばした。

「がはっ……!?」

蹴り飛ばされながらも、アルフィは反動を利用して
転がることで距離を取って、立ち上がった。

(くっ、まずい……!この子、強い……!
 こんな杖でまともに戦えるような相手じゃない……!)

ファルと共に2対1で戦えば分からなかったが、
当のファルは不意打ちでやられてしまった。

(どうする……!?いっそ、逃げるか……!?
 いや、ファルはまだ生きているかもしれないし、
 それを置いて逃げるわけにはいかないっ……!)

目まぐるしく思考するアルフィだが、ふと褐色の少女の
後ろから勢い良く飛び掛かる影の存在に気が付く。

「いきなり何するんですかああぁぁぁぁっ!!!」

ファルだった。
血塗れのまま、奇襲された怒りに身を任せて
褐色の少女に後ろから飛び掛かったのだ。

「……っ!?」

倒れていたはずのファルが襲い掛かってきたことが
よほど意外だったのだろう。
褐色の少女はぎょっとしたように背後を振り返ったが、
そのときにはファルの拳が褐色の少女を今まさに捉えようと
していたところだった。

「ちっ……!」

だが、褐色の少女はすぐに動揺から回復して、
冷静にファルの拳を身に着けた胸当てで防いだ。

しかし、ファルの拳が褐色の少女の胸当てに突き刺さった瞬間、
夜の闇を飲み込むほどの強烈な雷撃が褐色の少女の全身に迸る。

「がっ……!!?ああああぁぁぁアアアァァァっっ!!?」

褐色の少女は全身を襲う雷の衝撃に、絶叫する。
しかし、ファルは容赦せずに、反対側の拳で
褐色の少女の頬を全力で殴り飛ばした。

褐色の少女はファルの拳によって数メートル吹っ飛んだが、
何とか受け身を取って、膝を付きながらも体勢を立て直した。

「ちっ……!しぶといですね……!」

舌打ちをしつつ、ファルは褐色の少女に向かって
ファイティングポーズを取る。

アルフィはファルの猛攻に呆気に取られていたが、
我に返って、ファルに話しかける。

「ファ……ファルっ!?怪我は大丈夫なのっ!?」
「問題ありませんっ!あのくらいなら、
 師匠のゲンコツのほうがずっと痛いですっ!」

心配するアルフィに、ファルは力強く答える。
確かに、血塗れの見た目の割にはしっかりとした立ち姿だ。
見た目ほど重傷ではないのかもしれない。

しかし、対峙する褐色の少女はファルの腕を見て、
驚愕の声を上げる。

「……その腕輪……!?まさか、黄金竜の……!?」
「え……?」

褐色の少女の視線を追って、
アルフィもファルの腕に視線を向ける。

今まで特に気にしてはいなかったが、
ファルの腕には、確かに黄金の竜の意匠が
施された腕輪が着けられていた。

「え?あ、これですか?支給品に入ってたんですよ!
 よく分かんないけど、綺麗だから着けてみました!」

自分の腕に視線が集まっていることに気が付いて、
ファルは構えを解いて、笑顔で腕を掲げる。

どうやらその腕輪を気に入ってるようで、
先ほどまでの怒りはどこへやら、実に嬉しそうだ。
(血塗れのままで、ニコニコしながら自慢げに腕輪を
 見せびらかす少女の姿は、とてもシュールだったが)

「……ちっ……!」

そんなファルを見て、褐色の少女は舌打ちをすると、
地面に向かって、剣を叩き付けた。

瞬間、爆発が起きる。

「なっ……!?」
「わっぷっ!?何ですか、もうっ!?」

爆発に驚きながらも、アルフィとファルは油断なく身構える。
爆風による煙幕からの不意打ちを警戒したのだ。

しかし、煙幕が晴れると褐色の少女の姿はどこにもなかった。

しばらくの間、警戒を続けていた二人だが、
どうやら褐色の少女は撤退したようだと判断して、
身体から力を抜く。

「……はぁ~、びっくりしましたね!
 まさか、いきなり襲い掛かられるなんて
 思ってませんでしたよ!」
「……まぁ、結構話し込んじゃってたからね。
 それに今思うと、私たち完全に油断してたし……。
 ……それよりもファル、本当に怪我は大丈夫なの?」

アルフィはファルの怪我の具合を見ようと近寄るが、
ファルの傷がほとんど塞がっていることに気が付く。

「……え……?傷が……?」
「え?……あれ?傷、塞がってますね?」

どうやら、ファルにも心当たりはないらしい。
ということは、ファルが実は回復魔法を使えるとか
そういうことでもないようだ。

「これって、いったい……?」
「……はっ!?もしかして、私、師匠に殴られ続けたせいで、
 とうとう頑丈さだけでなく、超回復能力まで身に着けたのではっ!?」
「いや、ないから」

ファルの戯言をアルフィは冷たく切って捨てる。
ふと、アルフィは一つの推論に思い当たった。

「……ひょっとして、その腕輪のおかげなんじゃない?」
「え?この腕輪ですか?」

アルフィの言葉に、ファルは目を丸くして腕輪に視線を向ける。

「黄金竜は生命の象徴だって、ルルフェから聞いたことがある。
 その腕輪、黄金竜の意匠が施されているくらいなんだから、
 傷を回復してくれる効果があっても不思議じゃないんじゃないかな」
「あっ!?そういえば、たまに街で売られてるものすごく高いお薬も
 黄金竜の鱗を煎じて作ったとか言ってましたよっ!?」
「うん。効果を考えれば、アレでも安いのかもしれないけどね」

ともあれ、おそらくこの推測に間違いはないだろう。
アルフィは似たようなもので、『再生の腕輪』というものを知っている。
身に着けているだけで、身体の傷を徐々に回復してくれる魔道具だ。
おそらくは、ファルが身に着けている腕輪もそれと同じ類のものだろう。

「……ってことは、武器のハズレを補って余りある大当たりだね。
 良かったじゃない、ファル」
「……む……まぁ、そうですけど……」

ファルは複雑そうな顔で拳に握り込んだ石へと目を向ける。
この石を支給された屈辱を思うと、素直に喜べないらしい。

「……それにしても、さっきのファルの技、すごかったね。
 雷で攻撃する格闘家なんて、始めて見たよ」
「ふふふ、そうでしょうっ!師匠直伝の必殺技ですっ!
 どんな重装甲だろうと、私の前では無意味ですよっ!」

褒められたファルは一転して、鼻高々といった様子で胸を張る。
その得意げな姿が相棒のルルフェと被って、アルフィは苦笑する。

ルルフェとファルの性格は全然違うが、調子に乗りやすいところは
似ているのかもしれない。

ふと、ルルフェは無事だろうかと、アルフィは思う。
自分やファルに比べれば、ルルフェはしっかりしているが、
それでも、この状況では何が起こるか分からない。

それこそ、先ほどの自分たちのように不意打ちを受けてしまえば、
白兵能力の低いルルフェはあっさりやられてしまうかもしれないのだ。

(……早く、ルルフェと合流しないと……)

アルフィは、強くそう思った。
ルルフェのことが心配なのはもちろんだが、
何よりもルルフェがいなければ、調子が出ないのだ。

アルフィにはルルフェが、ルルフェにはアルフィがいて、
お互いの力を十全に発揮できるのだから。

そう、二人揃ってこその『双炎』の冒険者なのだから。

(……まぁ、ルルフェは嫌がるだろうけどね)

『双炎』と呼ばれる度に、露骨に顔を顰める相棒の姿を思い出し、
アルフィは再び苦笑を浮かべる。

「……アルフィさん、大変ですっ!!」

しかし、ファルの大声によって、アルフィの思考は中断された。
焦燥を浮かべたファルの表情に、何事かとアルフィは問いかける。

「どうしたの、ファル?」
「ふ……袋がっ……!!アルフィさんの袋が、ありませんっ!!」
「……えっ!?」

慌ててアルフィは袋があったはずの場所に目を向ける。
しかし、ファルの言う通り、そこには何もなかった。

周りを見渡してみるものの、アルフィの袋はどこにも見つからない。
この事実が示すことは、つまり……。

(……やられたっ……!!)

アルフィは痛恨の表情で、近くの木を殴りつけるしかなかった。




(……治癒の霊薬が二つか。悪くないわね)

褐色の少女……ココットは、奪った袋の中身に満足していた。

思わぬ反撃で逃げ出す羽目になってしまったが、
代わりに貴重な回復アイテムが手に入ったのだ。

しかも、治癒の霊薬は身体にかけるだけで効果を発揮する薬だ。
キュアポーションと違って、戦闘中にも使用できるのが大きい。

敵は仕留め損ねたが、戦果は上々といったところだろう。
『塗装の魔石』を一つ消費した甲斐があったというものだ。

(……さて、あの二人をどうするべきかしら。
 できることなら、あの腕輪を奪いたいけれど……)

しかし、あの格闘家の女の雷の拳は厄介だ。
せっかくの質の良い胸当ても、雷相手では意味がない。
相打ち覚悟でいくにしても、向こうには腕輪がある。

もう一人の女も、けっして侮っていい相手ではない。
不意打ちを避けたこと、あんな武器で短時間ながらも
自分とやり合えたことを考えると、相手にまともな武器が
支給されていれば、負けていたのは自分かもしれないのだ。

(……今は放っておくしかないか)

ジョーカーにでも出会って、潰れてくれるのを祈っておこう。

(……まだ身体の痺れが残ってるわね。
 もう少し休んでから動くとしましょうか)

アルフィの袋から自分の袋へと支給品を移し替えたココットは、
アルフィの袋を投げ捨てると、近くの木の幹に座って休み始めた。


【A-2/森/1日目 0:30~】

【アルフィ@剣士】
[年齢]:17
[状態]:健康
[武器]:ナヤマの杖
[防具]:皮の鎧
[所持品]
・なし
[思考・状況]
1.ファルと一緒に行動する
2.ルルフェを探して合流する
3.ナターシャを探して保護する
4.褐色の女剣士(ココット)を警戒


【ファル@格闘家】
[年齢]:15
[状態]:血塗れ、ダメージ(小)、疲労(小)
[武器]:握り込むのに適した石
[防具]:黄金竜の腕輪
[所持品]
・ファルの袋
 ・基本支給品一式
 ・(不明の道具)
[思考・状況]
1.アルフィと一緒に行動する
2.師匠(イリカ)を探して合流する
3.褐色の女剣士(ココット)を警戒


【ココット@サイギル族】
[年齢]:16
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)
[武器]:竜鱗の長剣×2
[防具]:魔人の胸当て
[所持品]
・ココットの袋
 ・基本支給品一式×2
 ・塗装の魔石×2
 ・治癒の霊薬×2
[思考・状況]
1.全ての参加者を殺して生き残る


『参加者・ジョーカーの現在地』
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