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リョナラー連合主催バトルロワイアル(パロロワ) 014.片手落ち

「……むー……」

海にほど近い森の中、一人の少女が渋い顔をしていた。
短い茶髪に動きやすそうな緑の服を着たその少女の名は、ターリカ。
森で動物や魔物を狩って生計を立てている、狩人の少女だ。

さて、ターリカがなぜ渋い顔をしていたのかというと、
それは彼女の支給品が原因だった。

ターリカが得意とする武器は、弓だ。
しかし、支給された武器は短剣が一本。

別に短剣がまったく扱えないわけではないが、
それでもターリカはやはり弓が欲しかった。

ターリカは幼い頃から弓を肌身離さず持ち歩き、慣れ親しんできたのだ。
もはや弓はターリカにとって身体の一部にも等しいものであり、
弓が無い状態では落ち着かなくて仕方が無いのだ。

「……弓……欲しいな……」

ターリカは寂しげに、ぼそっと呟いた。

しかし、ふとターリカの耳がぴくっと動き、
弾かれたように彼女の俯いた顔が跳ね上がった。

狩人として過ごしてきたターリカの耳は、
はるか遠くの物音だろうと聞き逃さない。
こちらへと近づいてくる何者かの気配を察知したターリカは、
すぐさま木の上へと身軽な動きで登っていく。

そして、ターリカは枝と葉の陰に身を隠して短剣を構える。

(……よし……弓が無いなら、奪っちゃおう……)

ターリカは気合を入れるように「ふんっ」と鼻を鳴らすと、
森と一体化したかのように完全に気配を殺して、獲物を待ち伏せ始めた。

交渉や交換によって弓を手に入れるという発想は、欠片もなかった。
ターリカという少女は、骨の髄まで狩人だったのだ。




紫色の髪を三つ編みにし、焦げ茶色の厚手の服を着た少女が
びくびくしながら、夜の暗い森の中を歩いていた。

彼女の名はニロフィア。
町外れで道具屋を営む、商人の娘だ。

『なぜ町外れに店を構えるのか』と思う人もいるだろう。
しかし、意外と町外れは狙い目なのだ。

旅人や冒険者、あるいは隣町へ出稼ぎに行く者などは、
度々必要な物を用意し忘れたりすることがあるものだ。
あるいは、
『そういや、あそこ行くならアレがあったほうがいいなぁ。
 でも、町に戻るのはめんどくさいなぁ』
という場合に、町外れの店というのはとても重宝するのだ。

……などと言い訳したところで、町の中心で営んでいる店に
客足で敵うはずもないことは明白だった。

ぶっちゃけてしまえば、ニロフィアの家は貧乏なので
町外れの安い土地程度しか買えなかっただけであった。
身も蓋もない話である。

ともあれ、この殺し合いにおいてはニロフィアの
そんな事情などはまったく関係が無い。

先ほどの話の通り、ニロフィアは貧乏ではあるものの、
ごく普通の商人の娘であり、一般人の少女だった。

そんな一般人が殺し合いなんてものに放り込まれれば、
怯えて泣き叫び、逃げ惑ったとしても仕方が無いだろう。

幸いというか何というか、ニロフィアはそんなことを
していても仕方が無いと理解できる程度の頭はあった。

しかし、だからといって何か方針を決めて行動できるほど
度胸や行動力があるわけでもなかった。

そこで、ひとまずは支給品を確認しようと袋を開いてみた。
そして、袋から出てきた『あるもの』のおかげで、
ニロフィアは何とか足を踏み出すことができたのだった。

その『あるもの』とは……。




「……うぅ……怖いよぉ……帰りたいよぉ……」

涙目で怯えながらも、ニロフィアは歩き続ける。

それは隠れていても仕方が無いと理解しているからだが、
だからといって、いつ殺されるかも分からない状況で
足を進めるという行為は、並大抵の度胸では務まらないはずだ。

ニロフィアの行動を後押ししているのは、彼女が胸に抱く物のおかげだ。
彼女が胸に抱いている物……それは『クマのぬいぐるみ』だった。

誤解の無いように記述しておくが、別にこれは
ニロフィアがぬいぐるみが大好きな女の子であり、
ぬいぐるみを抱いていることで安心して行動ができる、
というわけでは、断じてない。

このクマのぬいぐるみの名は、癒しのテディベア。
身に着けることで精神を安定させる効果があり、
常に冷静な判断をすることが可能になるという、
とても有用な魔道具である。

……もっとも、その見た目の可愛らしさのせいで
男性が身に着けるには少々勇気がいるのが難点だが。

ともあれ、商人のニロフィアは癒しのテディベアを
扱ったこともあったため、その使い方も分かっていた。

ニロフィアはそのクマを自分に括り付けて抱き締めることで、
何とか歩き出すことができたのだった。

とはいえ、恐怖が完全に消えたわけでもなく、
ニロフィアは周囲をきょろきょろと落ち着きなく
見渡しながら、びくびくと怯えて歩き続けていた。

「な……何も、出てこないよね……?誰も、いないよね……?」
「いる」
「ひあああぁぁぁぁっっ!!?」

いきなり後ろから声をかけられたニロフィアは驚いて飛び上がる。
しかし、その首に短剣の冷たい刃が突きつけられ、
ひっと息を呑んで、ニロフィアは大人しくなる。

ニロフィアに短剣を突きつけた人物……ターリカは、
静かな口調でニロフィアに詰問する。

「弓をよこすか、死ぬか……好きな方を選べ……」
「それ、詰問じゃなくてただの脅しだよねっ!?」
「なるほど、死がお望みか……」
「いや、待ってっ!?あるからっ!?弓あげるからっ!?」

容赦無しに話を進めるターリカに、ニロフィアは慌てて
袋から弓(武器として支給されたものの扱えないために
袋に入れっぱなしだった)を取り出して、ターリカへと渡す。

ターリカは渡された弓を受け取ると、満足げに一撫でする。
その様子を見ながら、ニロフィアは考える。

(そ……そうだ……!この子だって、問答無用で私を殺して
 弓を奪わないんだから、殺し合いに乗っているとは限らない……!
 少なくても、話し合いの余地くらいはあるはず……!
 何とか協力を取り付けられれば、少しは状況が良くなるかも……!)

癒しのテディベアのおかげか、ニロフィアはターリカのことを
相容れない強奪者と単純に考えず、冷静に和解の可能性を見出す。
しかし、当のターリカはニロフィアが声をかける前に、
くるっと背を向けて、そのまま走り去ってしまった。

「……あっ!?ちょっ……ちょっと待ってっ!?」

走り去るターリカに、ニロフィアは慌てて声をかけるが、
すでに狩人の少女の姿は見えなくなっていた。
残されたニロフィアはその事実に落胆するしかなかったが、
ふとあることに気づいて、ぽつりと呟いた。

「……矢は、渡さなくて良かったの?」




「……ふふ……ふふふ……」

幸先よく弓を手に入れることができたターリカは
口元を緩めて控えめな鼻歌を口ずさんでいた。

上機嫌な様子でぎゅっと弓を抱き抱えているターリカだが、
間抜けな彼女が矢を貰い忘れていることに気がつくのは、
もうしばらく後の話である。


【A-5/森/1日目 0:30~】

【ターリカ@狩人】
[年齢]:15
[状態]:健康
[武器]:ナヤマの弓(矢無し)、勇気の短剣
[防具]:なし
[所持品]
・ターリカの袋
 ・基本支給品一式
 ・(不明の防具・道具)
[思考・状況]
1.弓が手に入ってご機嫌

※矢を貰い忘れたことに気が付いていません。


【ニロフィア@商人】
[年齢]:16
[状態]:健康
[武器]:なし
[防具]:癒しのテディベア
[所持品]
・ニロフィアの袋
 ・基本支給品一式
 ・ナヤマの矢×20
 ・(不明の道具)
[思考・状況]
1.殺し合いを打破、あるいは脱出する
2.1のために情報や協力者を集める


『参加者・ジョーカーの現在地』
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