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リョナラー連合主催バトルロワイアル(パロロワ) 031.発狂音波

「……ふふ……ふふふ……」

狩人の少女ターリカは上機嫌な様子で
鼻歌を歌いながら歩いていた。

「……あ」

しかし、ふと何かに気が付いたように
鼻歌を止めて、ぴたりと立ち止まる。

「……矢……もらい忘れた……」

ターリカは「失敗した」という顔で呻く。

既にあの三つ編みの少女と別れてから、
結構な時間が経っている。
近くを探し回ったところで、あの少女は見つからないだろう。

「……むー……」

ターリカは不機嫌そうに唸るが、今更どうしようもない。
敵に襲われた場合は、短剣で応戦するしかないだろう。

しかし、そのとき……。

「……うわああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁんっっ!!!」

幼い少女の泣き声が辺りに響き渡った。




「……うわああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁんっっ!!!」
「……!?」

いきなり聞こえてきた幼い少女の泣き声に、
ニロフィアはびくっと肩を震わせる。
彼女は癒しのテディベアをぎゅっと抱き締めて、
不安そうに泣き声の聞こえてきたほうに顔を向ける。

「な……何……?子供が泣いてる……?」

まさか、誰か危険な人物に襲われたのだろうか?
だとすると、助けに行かなければ。

「た……たしか、こっちだよね……?」

ニロフィアは声の聞こえてきたほうへと足を運ぶ。

しばらく歩いて、森を抜けたところに
祠がぽつんと立っているのを見つける。

「うわあああぁぁぁあああぁぁああぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!
 クマちゃんっ、クマちゃあああぁぁぁああぁぁぁんっっっ!!!」

泣き声はあそこから聞こえているようだ。

(早く行ってあげないと……!)

こうしている間にも、あの泣いている子が
危険な目に遭っているかもしれないのだ。

ニロフィアは急いで祠へと走るが、
ふと頭上に影が差したことに気が付く。

何なのかとニロフィアが上を向くと、
深緑色の長髪の少女が頭上から迫っていた。

「……え?」

そして、少女は持っていた短剣をニロフィアの胸に突き刺した。




「……はっ!?」

ニロフィアに短剣を突き刺した少女……ホノカは、我に返る。
そして、自分が少女の胸に短剣を突き刺しているのに気が付く。

「!?……う、わっ!?な、え、何っ!?なんでっ……!?」

ホノカは狼狽えて、二、三歩後ずさる。
さすがに尻餅を突くほど取り乱しはしなかったが、
心臓はバクバクと早鐘を打っている。

(えっと……た、たしか……!
 そうだ、子供の泣き声が聞こえて……!
 そしたら、いきなり意識が……!)

ホノカは必死に記憶を遡って、なぜこんなことに
なっているのかを思い出そうとする。

「あ、貴女……!?なんで、こんなことを……!?」

しかし、冷静になろうとするホノカに、怯えた声がかけられる。

(!?……ヤバい、誰かに見られた!?)

ホノカは青ざめる。
ホノカ自身はなぜこんな事態になっているのか
まったく記憶にないが、状況だけ見れば、
どう考えても、ホノカは殺人者だ。

なんとか言い訳をしようと
ホノカは声のしたほうに目を向ける。

「……なっ!?」

ホノカは目を疑う。

なぜなら、目の前には短剣を胸に刺されたはずの
ニロフィアがピンピンした様子で立っていたからだ。
声をかけたのは、刺されたニロフィアだったのだ。

ホノカの混乱に拍車がかかる。

あり得ない。
あの位置なら、確実に心臓を貫いているはずだ。
それなのに、こんなに平然としているなんて。

「こ……答えてくださいっ!
 貴女、殺し合いに乗る気なんですかっ!?」

ニロフィアが怯えを含んだ声で、
それでも毅然とホノカに問いかけてくる。

ホノカは混乱しつつも、それに答える。

「ま……待ってっ!
 私も、何が何だか分からないのよっ!
 気が付いたら、貴女を刺していて……!」
「え……?き、気が付いたら……?」

ホノカの答えに、ニロフィアも戸惑った様子を見せる。
しかし、そこに新たな闖入者が現れる。

「!?……危ないっ!」
「きゃあっ!?」

ニロフィアに襲い掛かる影に気が付き、
ホノカは咄嗟にニロフィアを押し退けて、
持っていた短剣で影の攻撃を受け止める。

「くっ……!いきなり何なのよ、アンタっ!?」

ホノカは襲撃者に怒鳴る。
しかし、襲撃者は無言で焦点の合わない瞳を向けるのみ。

「……えっ!?さ、さっきの弓の人っ!?」

後ろでニロフィアが驚いた声を上げる。
ホノカは襲撃者……ターリカに目を向けたまま、
背後のニロフィアに問う。

「……知り合いなのっ!?」
「さ、さっき出会った人ですっ!
 殺し合いには乗ってないと思ってたのに……!」

ニロフィアの言葉と、ターリカの茫洋とした瞳、
そして自分の記憶が抜け落ちていた状況から考えて、
ホノカはターリカも自分と同じ状態なのではと推測する。

(くっ……!さっきから、一体どうなってるのよ……!?)

ホノカは訳の分からない状況に苛立ちながら、
ターリカの短剣を押し返す。

そして、背後のニロフィアに叫ぶ。

「アンタは逃げなさいっ!
 コイツは私が何とかするからっ!」
「えっ……!?」

ニロフィアはホノカの言葉に戸惑う。

先ほど自分に短剣を突き刺してきた相手が、
今度は自分を守りながら『逃げろ』と言う。

はっきり言って訳が分からなかったが、
ここは言う通りにしたほうがいいと
ニロフィアは判断する。

「……わ、分かりました……!」

ニロフィアはホノカたちに背を向けて、走り出した。

「……見つけた……クマちゃん……」
「……え」

しかし、ニロフィアの足はすぐに止まる。
彼女の前には、人形のような容姿の小さな少女が立っていた。

「クマちゃんを……返せえええぇぇぇぇぇっ!!!」

小さな少女……恐怖の精霊スペクターのベアトリスは、
涙に濡れた憤怒の表情で、絶叫した。

その声は、狂気を誘う発狂音波を辺りにまき散らす。

「がっ……!?」
「ぎ、ぃ……!?」

後ろでホノカとターリカの呻く声。
度重なる発狂音波を受けて、精神が限界を超えたのだろう。
二人は白目を剥いて気絶してしまった。

一方、ベアトリスの身の毛のよだつ恐ろしい声を
まともに叩き付けられたニロフィアは……。

「ご、ごめんなさいっ!
 このクマさん、貴女のなのねっ!?
 ほ……ほら、返すからっ!ねっ!?」

特に影響を受けていない様子で、
慌てて手に持っていた癒しのテディベアを
ベアトリスにぽふっと押し付けた。

「…………」

ベアトリスは癒しのテディベアを抱き抱えたまま、
しばらくニロフィアを睨んでいたが……。

「えいっ」

いきなり、ニロフィアの目に両手の親指を突き刺した。

「いぎゃああぁぁぁああぁぁぁぁぁっ!!?」

たまらず、ニロフィアは激痛に目を押さえて、
ごろごろと地面を転がり回る。

ベアトリスはその様子を見て、
ふんっと馬鹿にするように鼻を鳴らす。

「……いこっ!クマちゃんっ!」

ぷいっとニロフィアから視線を外して、
ベアトリスは去っていった。




「……う……ぐ……!」

ベアトリスが去ってしばらくの時間が経った後、
意識を失っていたホノカがよろよろと起き上がる。

辺りを見回すと、同じく気を失っているターリカ、
そして両目を押さえて呻いているニロフィアの姿。

「……とりあえず、皆生きてるみたいね……」

ホノカは安堵した様子でそう呟くと、
再び気を失う前の出来事を思い出す。

意識を失う前にちらっと見た、小さな女の子。
間違いない、あれは恐怖の精霊スペクターだ。

おそらく、ホノカとターリカの正気を奪ったのも、
スペクターの発狂音波が原因だ。
ニロフィアにだけ発狂音波が効かなかったのは、
彼女が胸に抱いていた癒しのテディベアのおかげだろう。

……では、最初にニロフィアに短剣を突き刺しても
彼女が無傷だったのは何故なのか?

ホノカは首を傾げるが、呻いているニロフィアの
傍に落ちている袋から覗く魔石を見て、納得した。

幻化の魔石。
自分の身体を幻と化すことで、
攻撃を素通りさせる効果を持つ魔石。

ニロフィアは不意打ちを防ぐために、
あらかじめこの魔石を使っておいたのだ。

種が割れてみれば、特に不思議なことはなかった。

(……とはいえ……)

ホノカは頭に手を当てて、悩む。

この場にスペクターがいるということは、大問題だ。
殺し合う気の無い者でも、彼女の発狂音波を聞いたら、
正気を失って周りの者に攻撃を仕掛けてしまうかもしれない。

実際、ホノカ自身も正気を失っていたし、
運が良くなければ、ニロフィアを殺していた。

しかも、スペクターへの唯一の対抗策の癒しのテディベアも、
どうやらスペクター自身に奪われてしまったようだ。

(……懐柔するにしても、倒すにしても、
 近づいたらまた正気を失うかもしれないし……
 本当に、どうすりゃいいのよ……)

降って湧いた大問題に、ホノカは頭を抱えるしかなかった。

(……スペクターについては、今考えても仕方ないか。
 それよりも、今はコイツらと話をするほうが大切ね)

ホノカは呻くニロフィアと気絶しているターリカが
回復するのを、腰を下ろして待つことにした。


【A-4/祠の前/1日目 1:00~】

【ホノカ@ナヤマ一族】
[年齢]:17
[状態]:疲労(中)、精神ダメージ(中)
[武器]:銅の短剣
[防具]:銅の盾
[所持品]
・ホノカの袋
 ・基本支給品一式
 ・爆滅の魔石×2
[思考・状況]
1.シオンを探す
2.殺し合いを叩き潰す
3.スペクター(ベアトリス)を警戒
4.ニロフィア、ターリカと話をする


【ターリカ@狩人】
[年齢]:15
[状態]:気絶、疲労(中)、精神ダメージ(中)
[武器]:ナヤマの弓(矢無し)、勇気の短剣
[防具]:なし
[所持品]
・ターリカの袋
 ・基本支給品一式
 ・(不明の防具・道具)
[思考・状況]
1.(不明)


【ニロフィア@商人】
[年齢]:16
[状態]:目が痛い
[武器]:なし
[防具]:癒しのテディベア
[所持品]
・ニロフィアの袋
 ・基本支給品一式
 ・ナヤマの矢×20
 ・幻化の魔石×2
[思考・状況]
1.殺し合いを打破、あるいは脱出する
2.1のために情報や協力者を集める
3.目が、目がぁ~!


【ベアトリス@恐怖の精霊スペクター】
[年齢]:不明
[状態]:疲労(中) ※泣き疲れたため
[武器]:なし
[防具]:癒しのテディベア
[所持品]
・ベアトリスの袋
 ・基本支給品一式
 ・(不明の武器・防具・道具)
[思考・状況]
1.クマちゃんが戻ってきて安心


『参加者・ジョーカーの現在地』
genzaichi_rowa031.png


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