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リョナラー連合主催バトルロワイアル(パロロワ) 035.決裂 (20140527修正Ver)

洞窟の入り口に、小柄な少女の影が二つ。
魔術師フィナと、スラムの少女テルシェである。

洞窟を出たフィナとテルシェは
次の目的地について相談していた。

「……で、フィナ。
 アタシたちはどこに行けばいいと思う?」
「そうねぇ……悩みどころだけど、
 とりあえず、A-3の町にでもいかない?
 現在地からすると、E-1の神殿とかのほうが近いけど、
 こっちのほうが他の参加者と出会える確率が高そうだし」

フィナは地図を確認しながら、テルシェに答える。

「町ねぇ……でも、殺人者とかもそう考えて、
 町を目指すんじゃないのか?」
「まぁ、そこは何とも言えないけど……。
 とはいえ、受け身で動いてても仕方ないでしょ?
 この殺し合いには3日という時間制限と
 禁止エリアっていうルールがあるんだから、
 危険を承知で積極的に情報を集めていかないと、
 殺し合いの主催者に対抗するには間に合わないわよ」

フィナの言葉に、テルシェが首を傾げる。

「?……対抗って……ばれないように首輪を外して、
 その後に主催者をぶっ殺せばいいんじゃないのか?」
「……いや、だから、そのためには情報が必要でしょ?
 この首輪がどうやったら安全に外せるのかとか、
 主催者の人数や戦力の構成の把握とか……」
「……それ、他の参加者に会えば分かることなのか?」

自分たちと同じ立場の他の参加者たちが、
そこまで重要な情報を握っているのだろうか。

テルシェは、フィナの言葉に疑問を向ける。

「いろいろと分かる可能性はあると思うわよ。
 この首輪、少なくとも魔道具であることは確かだから、
 魔道具関連の知識を持った人……例えば、ディアナとかの
 見解を得られれば、首輪を安全に外す方法についても
 何か分かるかもしれないしね」

フィナは自分の首輪につつ、と触れながら答える。

「それに、私たちはどうやってここに連れてこられたか覚えていないけど、
 他の参加者の中には覚えている人もいるかもしれないでしょ?
 連れてこられる前の状況を知ることができれば、主催者について
 いろいろと見えてくることもあるはずよ」
「……ん……そっか、なるほど……」

あまり頭の良くないテルシェは、フィナの言葉を
頭の中で噛み砕き、理解するように努める。

「そんなわけで、町を目指すわ。いいわね、テルシェ?」
「ああ、分かった」

相談が終わった二人は、A-3の町へ向けて歩き出した。




先を歩くフィナの後ろを付いていきながら、テルシェは考える。

とりあえず、自分やレミルがこの殺し合いを生き残るためには
他の参加者から情報を得ることが重要らしいとは理解できた。
……そして、その得た情報を活用して生き残る手段を考えるのは、
自分やレミルでは無理がありそうだということも。

(……よし、とりあえず頭の良いヤツは絶対に必要だな。
 魔道具に詳しくて、忌み子にも優しいヤツが……)

そこまで考えて、「ん?」とテルシェは疑問に思う。

「……なぁ、フィナ。
 アンタ、魔道具に詳しそうだったよな?
 アンタはこの首輪、外せないのか?」

先ほどのフィナの考察では、魔道具の知識を持つ者なら、
首輪を安全に外せるかもしれないとのことだった。

フィナは先ほど、テルシェのヤタガラスの短刀が
希少な魔道具であるとすぐに見抜いた。
魔道具に関して、それなりの知識を持っているのは明らかだ。

「……んー、正直、今の段階では何とも言えないわ。
 私、魔道具は確かに好きだけど、ディアナとかの
 本職の学者に比べたら、大したこと知らないし……。
 それに、首に嵌まった状態の首輪なんて満足に調べられないしね」 

フィナは難しい顔で、首輪を撫でながら呟く。

そこで、テルシェはようやく、フィナが先ほどから
ずっと首輪を弄り続けていることに気が付いた。

(そっか……コイツ、ずっと首輪のことを調べてたんだ……)

そういえば、テルシェに方針を説明しているときも
フィナは首輪を弄っていたような気がする。
同行者にこれからの方針について説明をしながら、
時間を無駄にしないように首輪のことも調べていたわけだ。

そのことに、テルシェは感心する。
正直なところ、ただの魔道具好きの変人だと思っていたのだが、
どうやらフィナはテルシェが思っていたよりも有能らしい。

そして、ふとテルシェは頭が良くて魔道具に詳しく、
忌み子にも理解があるという条件に、
フィナがほぼ一致することに気が付いた。

人外とも一応は話し合う考えがあるフィナなら、
よほど危険な人外と出会って考えが変わることがない限り、
大人しくて人の良いレミルを敵視することはないだろう。

(……コイツは、しっかりと味方に引き込んでおきたいな。
 今のような曖昧な関係じゃなくて、一蓮托生の関係になっておきたい。
 もし人外を敵視する連中と組まれたら、レミル姉ちゃんがヤバい)

テルシェがフィナを懐柔する方法を考えていると、
フィナは首輪を弄るのをやめて、テルシェに視線を向けた。

「ねぇ、テルシェ。ちょっとアンタの首輪、見せてくれない?」
「!……ああ、もちろん構わないぞ!」

フィナの言葉に、テルシェは弾かれたように答えて、
素早くフィナの傍へと駆け寄って、うなじを向ける。

「さあ、好きなだけ調べてくれ!」
「?……なんか、妙に素直ね?
 もうちょっと仕方なさそうにくるかと思ったけど……」
「何言ってんだよ!私だって、首輪を外したいんだ!
 このくらい協力するのは当たり前だろ?」
「……ま、それもそっか」

フィナは納得して、テルシェの首輪を調べ始めた。

「継ぎ目……なし……魔力の流れ……なし……
 材質はミスリル……少なくとも、表面は……」

ぶつぶつと喋り続けるフィナを、テルシェは固唾を飲んで見守る。
やがて、フィナは一息つくと、テルシェから離れる。

「……どうだった?」
「……自分の首輪を調べていたときに分かったことが
 改めて確信できたってくらいかしらね……」

つまり、何も新しいことは分からなかったらしい。
その言葉に、テルシェはがっかりする。

「……やっぱり、首輪のサンプルが欲しいわね」

フィナが難しい顔で呟く。
それを聞いたテルシェが顔を上げる。

「……サンプルって、どういうことだよ?」
「……多少無茶な調べ方をしても問題の無い、
 人間の首に嵌まってない首輪が欲しいのよ。
 首に嵌まったヤツを乱暴に調べて爆発したら、
 洒落にならないでしょ?」

フィナの説明を聞いて、テルシェは納得する。
要するに、人間の首に嵌まっている状態の首輪を調べても、
爆発の危険があるから満足に調べられないということらしい。

「じゃあ、とりあえず誰かの死体を見つけて、
 首を斬って剥ぎ取ればいいんじゃないか?」
「……あ、あっさり言うわね……?
 死体とはいえ、人間の首を斬るなんて
 気分の良いものじゃないと思うんだけど……」
「そんなこと言ったって、やらなきゃアタシたちが死ぬだろ?」
「ま、まぁそうなんだけどさ……」

あっさりと言ってのけるテルシェの言葉に、若干フィナは引く。

やはり、スラム育ちだから考え方が荒んでいるのだろうか。
とはいえ、テルシェの言っていること自体は間違っていない。

(……あんまり、そういうことしたくないんだけど……
 でも、こんな状況じゃ仕方ないのかな……)

死体の首を斬るという背徳的な行為。
それをせざるを得ない状況に、フィナは悩む。

「……ん?」

と、そこでテルシェが歩みを止める。
フィナも足を止めて、テルシェに目を向ける。

「どうしたの?」
「……誰かいる」
「っ!」

テルシェの言葉に、フィナは警戒してテルシェの視線を追う。

その先には、手作りの小さな墓の前に立つ二人の人物。
長い金髪の鎧を来た女性と仕立ての良い白いドレスを着た少女で、
少女のほうは涙を流して、墓に手を合わせている。

精霊ドリアードのティマを埋葬した女騎士クリスティーナと
貴族の少女マグダレーネだった。




「……フィナとテルシェか。よろしく頼む。
 安心してくれ、君たちは必ず私が守ろう」

お互いの自己紹介を終えた後、クリスティーナが
笑顔を浮かべて、フィナとテルシェに力強く宣言する。

「ありがとうございます、騎士様。
 正直、この子と二人だけじゃ不安だったから安心しました」

クリスティーナに対して、フィナはその言葉通りにほっとした様子を見せる。
魔術師とはいえ、戦闘経験のないフィナは子供のテルシェと
二人きりで殺し合いの場を動き回っている状況は不安だったのだ。

フィナは、この状況で出会えたクリスティーナという
頼りになりそうな騎士の存在に心底安堵していた。

「……騎士様に貴族様ねぇ……本当に守ってくれるのか?
 危なくなったら、アタシたちを置いて逃げちまうんじゃ……」

一方、テルシェのほうは胡散臭そうにクリスティーナを見ていた。
スラム育ちのテルシェにとって、騎士や貴族という存在は
自分のような貧民を見下すだけの憎むべき存在だったからだ。

しかし、クリスティーナはテルシェの憎まれ口にも
穏やかな表情で答える。

「テルシェ、君が不安に思うのも分かる。
 たしかに、騎士の中には君の言うような不届きな輩も存在する。
 しかし、私は君たちを見捨てるつもりなど、毛頭ない。
 この殺し合いを打破し、巻き込まれた者たちを救い、
 元の生活に返してやりたいと考えている。
 そのためにも、どうか私に君を守らせてくれないか?」

クリスティーナの言葉と態度は、真摯で誠実だった。
さすがにテルシェもそれ以上憎まれ口を叩く気にもなれず、
面白くなさそうにそっぽを向くだけに留めた。

テルシェの態度に、内心びくびくしていたフィナは
寛大なクリスティーナの様子に安堵する。

ここでクリスティーナの機嫌を損ねて、この殺し合いの場に
放り出されてしまえば、フィナたちの命が危なくなる。
クリスティーナがそんな行動を取るとは思えないが、
それでもわざわざ機嫌を損ねるようなことを言うべきではないだろう。

(……後でテルシェには注意しとかなきゃね……)

とりあえず、軽くゲンコツくらいはお見舞いしてやろう。
フィナは心の中でそう決めると、先ほどから気になっていたことを
クリスティーナに聞いてみることにした。

「……ところで騎士様、そちらのお墓は一体?
 まさか、もう殺し合いの犠牲者が……?」

フィナの言葉に、クリスティーナがいや、と答える。

「……安心してくれ。これは魔物の墓だよ。
 マグダレーネ嬢の慈悲で墓を作っただけで、
 人間が殺されたわけではない」
「っ……」

クリスティーナの言葉に、今まで俯いて静かにしていた
マグダレーネが肩を震わせる。

その様子を疑問に思いつつも、フィナは聞き返す。

「魔物……ですか?それは……」
「……おいっ!そ、その魔物って……!
 まさか、額に目のある女の子じゃないよなっ!?」

フィナの言葉を遮って、テルシェが顔に焦燥を浮かべて
クリスティーナに迫る。

「?……いや、おそらく精霊だと思うが……。
 テルシェ、その額に目のある少女とは何だ?」

クリスティーナは、当惑しつつも答える。
聞き返されたテルシェはハっとすると、みるみる顔を青くして
クリスティーナから視線を逸らす。

「い、いや……その……」
「……テルシェ、詳しく教えてくれないか?
 君はその額に目のある少女とどういう関係なんだ?
 それは……魔物なのか?」

クリスティーナの「魔物」という言葉を聞いたテルシェは、
キッとクリスティーナを睨んで、叫ぶ。

「……違うっ!レミル姉ちゃんは魔物なんかじゃないっ!」
「……レミル?」

テルシェが叫んだレミルという名前に、反応したのはフィナだ。

「……テルシェ、それってアンタがさっき言ってた、
 スラムで仲が良いっていう子よね?」
「あ……!?」

フィナの指摘に、テルシェはますます青くなる。
その様子に、クリスティーナはテルシェに鋭い目を向ける。

「……テルシェ、君はその額に目のある少女と……
 明らかに人間ではないその少女と仲が良いというのか?」
「……あ……う……!」

クリスティーナの問いにテルシェは目を白黒させていたが、
やがて開き直ったかのように、大声で叫ぶ。

「……そうだよっ!レミル姉ちゃんは人間じゃないけど、
 でもすっごく優しくて良いヤツだっ!
 だから、もしお前がレミル姉ちゃんを殺すっていうなら、
 アタシはお前を許さないぞっ!」

大声で敵意をぶつけるテルシェに、クリスティーナは腕組みをして沈黙する。
沈黙したクリスティーナを、テルシェは射殺すように睨み続けている。

険悪な様子の二人を見て、フィナが慌てて口を開く。

「ちょ……ちょっと落ち着いてよ、二人とも!
 それと、そもそもそのレミルって子だけど、
 もしかして、魔物じゃなくて忌み子なんじゃないの!?
 テルシェの話を聞いてると、そう思えるんだけど……!」
「……忌み子?」

フィナの言葉に反応したのは、クリスティーナだ。

「……フィナ、その忌み子とは何だ?」
「……忌み子は、人間と魔物の混血児です」
「なっ……!?人間と魔物の混血児だとっ!?
 そんなものが存在するのかっ!?」

クリスティーナは驚愕する。
彼女にとって、そのようなものが存在するとは
夢にも思わなかったのだ。

「……そうだよ。レミル姉ちゃんは忌み子だ。
 聞いたことはないけど、たぶん……」

テルシェは不機嫌そうな顔でフィナの言葉に頷く。

「そ……そうか……魔物ではなく、忌み子……。
 テルシェはその忌み子と親しいということか……」

クリスティーナは目に見えるほどに困惑している。
彼女にとっては、人間と魔物は決して交わることのない
敵同士の存在だったからだ。

だが、たった今、人間と魔物の混血児という
自分の価値観を覆すような存在を知らされた。
そのことに、クリスティーナは頭が追いつかない。

混乱しているクリスティーナに、フィナが重ねて言い募る。

「……騎士様。聞きました通り、レミルは忌み子です。
 人間の血を引いていますし、テルシェとも親しいみたいです。
 おそらく、危険な存在ではないと私は思います」
「当たり前だっ!
 レミル姉ちゃんはいつもアタシたちを守ってくれるんだぞっ!
 危険なわけあるもんかっ!」
「む……むう……」

二人の言葉に、クリスティーナは悩む。

レミルが忌み子だというのなら、魔物の場合とは話が違ってくる。
彼女がテルシェの言う通りの者なら危険な存在ではないだろうし、
半分とはいえ人間の血を引いているのなら、クリスティーナにとっても
レミルは守るべき存在になる。

だが、しかし……。

(……テルシェがレミルに騙されているということは、
 ないだろうか?)

クリスティーナは考える。

もしテルシェの慕うレミルが、実はテルシェを欺き騙していたとしたら?
半分とはいえレミルは魔物なのだから、人間の敵になる可能性も十分に考えられる。

「……騎士様、私からもお願いします。
 どうか、レミルさんを受け入れてあげてください」

と、そこでクリスティーナの思考を遮るように
新たな声が彼女の耳に響いた。

「!……マグダレーネ嬢……」

先ほどから、一言も言葉を発していなかったマグダレーネだ。
彼女はティマの死に沈んで黙っていたが、他の三人の話は聞いていた。
そして、クリスティーナがレミルの処遇について悩んでいるのを見て、
自らもクリスティーナを説得しようと思ったのだ。

「……騎士様が、魔物を敵視するのは当然だと思います。
 騎士様は今まで、人の命を奪う凶悪な魔物と戦ってきたのでしょうから。
 ……むしろ、私のような考え方をするほうがおかしいことも分かっています。
 でも……それでも、私はもうティマのような犠牲者を出したくありません」
「…………」

マグダレーネの言葉を、クリスティーナは黙って聞いている。

「騎士様にとって魔物が敵であっても、レミルさんは半分は人間なのでしょう?
 それなら、騎士様にはレミルさんを受け入れてもらいたいのです」
「…………」

説得の言葉を重ねるマグダレーネを、クリスティーナはしばらく無言で見つめていた。
しかし、やがて一つ溜息を吐くと、口を開いた。

「……会ったこともない者を信用することはできません。
 しかし、人間の血を引いているなら、問答無用に切り捨てるわけにもいきません。
 レミルという者については、出会ってから判断しましょう」

悩んだ結果、クリスティーナはそう答えた。
クリスティーナとしても、レミルをどうすれば良いのか分からないのだ。
そこで、判断材料を増やすためにも、実際にレミルという少女に出会ってから
結論を出すということに決めたのだ。

「……ありがとうございます、騎士様。今はそれでも十分です」

クリスティーナの言葉に、マグダレーネは淡い微笑みを浮かべる。
そのことに、クリスティーナはほっとする。

クリスティーナがティマという魔物を斬り殺してから、
この貴族の少女はずっと沈んだ顔をしていたのだ。
それがようやく小さいながらも笑顔を見せてくれたのだから、
クリスティーナは少しだけ胸のつかえが取れた思いだった。

「……おい、ちょっと待てっ!私はそれじゃ納得できないぞっ!
 出会ってから決めるって、つまりその騎士がレミル姉ちゃんを
 受け入れない場合もあるってことだろっ!?だったら……!」
「はいはい、テルシェはちょっと黙ってようね~?
 せっかくまとまった話を蒸し返しちゃ駄目でしょ~?」

フィナはクリスティーナに詰め寄ろうとしたテルシェの口を押さえて、
クリスティーナとマグダレーネから離れていく。

「もがっ……!?何すんだ、フィナっ……!?」
「……アンタ、もうちょっと考えなさいよ?
 騎士っていったら、魔物退治が仕事のような人たちなのよ?
 中には忌み子ってだけで容赦なく切り捨てる人もいるだろうし、
 受け入れることを前向きに考えてもらっただけでも十分でしょ?」

文句を言うテルシェに、フィナは小声で説明する。

「……そ、それは……そうかもしれないけどさ……」
「でしょ?
 なら、とりあえずは良しとしときなさいよ。
 あんまりしつこいと、逆効果になるわよ?
 大丈夫よ、何だかんだできっと受け入れてくれるって」
「……分かったよ……」

不満そうに黙るテルシェを離すと、
フィナはクリスティーナたちのほうに歩いていく。

「……フィナ、テルシェは何と?
 まだ何か言いたいことがあるなら、今のうちに……」
「いえいえ、テルシェもどうやら納得したみたいですので、
 騎士様はお気になさらずに」
「…………」

どう見ても納得していない様子のテルシェに、
クリスティーナは若干不安そうな視線を向けるが、
こう言われた以上は、クリスティーナも納得するしかない。

「……そうか。なら、そろそろ移動するとしないか?
 あまり一所に留まると、危険な参加者やジョーカーに
 見つかる可能性もある」
「ええ、そうですね。
 ならとりあえず、A-3の町に移動しませんか?
 他の参加者もまず町を目指す者が多いでしょうし……」

クリスティーナの提案に、フィナは頷いて
向かう場所の希望を告げる。

「そうだな。ひとまず、町を目指すとするか。
 マグダレーネ嬢もそれで構いませんか?」
「はい、構いません」

クリスティーナとマグダレーネも、町を目指すことに賛成する。

かくして、騎士と貴族を仲間に加えたフィナとテルシェは、
改めてA-3の町を目指すのだった。




(……あの騎士は、駄目だ……。
 アイツをレミル姉ちゃんに会わせたら、
 レミル姉ちゃんが殺されるかもしれない……)

町を目指す一行の最後尾で、テルシェはクリスティーナの背中を睨んでいた。

(……殺すしかない……アイツがレミル姉ちゃんを殺す前に……)

テルシェは胸中でクリスティーナを殺すことを決意する。

(……何とか、他の二人にばれないようにあの騎士を殺さなきゃ……。
 でも、どうする……?どうすれば、そんなことが……)

テルシェはクリスティーナを密かに葬る手段を考える。
と、そこで名案が浮かんだ。

(……そうだっ!アタシの支給品の召喚の魔石だっ!
 たしか、フィナはこれを使ったら命令を聞く魔物が出てくるって言ってた!
 なら、適当な理由を付けて皆から離れたところで、魔物を呼び出せば……!)

人目に付かないところで召喚の魔石を使えば、
テルシェが魔物を呼び出したことは誰にも分からない。

あとは呼び出した魔物にクリスティーナを殺せと命令してやれば、
魔物はフィナやマグダレーネを無視して、クリスティーナだけを襲うはずだ。

(……いける……!これなら、アタシがやったとばれないし、
 たとえ魔物が返り討ちにあっても、怪我くらいは負わせられるはず……!)

クリスティーナに怪我を負わせて戦闘力を削いでおけば、
いざというときにはテルシェがクリスティーナを殺すこともできるはずだ。

(……よし、町についたら魔物を呼び出して騎士を殺そう……!
 レミル姉ちゃんは、アタシが絶対に守るんだ……!)

貧民の少女は異形の友のために、騎士を殺す決意を固める。
少女にとっては、異形の友こそが最優先に守るべき存在なのだ。

友を守るためなら、少女は人を殺すことも厭わない。


【C-2/森近くの街道/1日目 1:00~】

【フィナ@魔術師】
[年齢]:18
[状態]:健康
[武器]:鉄の槍
[防具]:命中の護符
[所持品]
・フィナの袋
 ・基本支給品一式
 ・再生細胞クッキー×3
[思考・状況]
1.テルシェたちと行動する
2.首輪のサンプルが欲しい
3.A-3の町に向かう

※首輪について、以下のことを調べました。
 ・継ぎ目なし
 ・魔力の流れなし
 ・材質はミスリル(少なくとも表面は)
※レミルが忌み子だと知りました。


【テルシェ@スラム育ちの子供】
[年齢]:11
[状態]:健康
[武器]:ヤタガラスの短刀
[防具]:なし
[所持品]
・テルシェの袋
 ・基本支給品一式
 ・ミスリルの鎧
 ・召喚の魔石
[思考・状況]
1.レミルを探して合流する
2.人外(忌み子)に害意を持つ参加者は殺す
3.首輪を外せるかもしれないフィナとは友好関係を築いておきたい
4.A-3の町についたら、魔物を呼び出してクリスティーナを殺す

※レミルが忌み子だと知っています。
(レミル本人はそのことを知りません)


【クリスティーナ@騎士】
[年齢]:19
[状態]:健康
[武器]:白銀の長剣
[防具]:鉄の鎧
[所持品]
・クリスティーナの袋
 ・基本支給品一式
 ・ファイト一発×2
・ティマの袋
 ・基本支給品一式
 ・(不明の武器・防具・道具)
[思考・状況]
1.殺し合いを止め、主催者を打倒する
2.騎士として無力な人々を守る
3.殺人者や魔物、ジョーカーは殺す(忌み子については対応を考慮)
4.レミルと会って、善悪を見極める
5.A-3の町に向かう

※レミルが忌み子だと知りました。


【マグダレーネ@貴族】
[年齢]:12
[状態]:健康
[武器]:なし
[防具]:なし
[所持品]
・マグダレーネの袋
 ・基本支給品一式
 ・(不明の武器・防具・道具)
[思考・状況]
1.殺し合いを止める
2.A-3の町に向かう

※レミルが忌み子だと知りました。
※ティマの死に対しては、ひとまず立ち直りました。


『参加者・ジョーカーの現在地』
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